不動産売却の査定から売り出し価格の決定まで知っておきたい基礎知識
目次
不動産の売却を検討したいけど、やり方がわからない、売り出す価格の相場も知らない、果たして本当に希望する金額で売却できるのだろうか、など心配や不安は尽きないと思います。
売却の動機は、県外への転勤、移住、相続した物件を手放すなどさまざまですが、動機の違いが売却の査定に影響することはありません。
しかし、売却の流れを知っておくことで、スムーズに取引が成約する可能性は高くなります。
最悪なのは、いつまでも売れ残ってしまうこと。
そこで今回は、不動産売却における査定方法や事前準備、あるいは注意すべきポイントなどをお伝えします。
不動産査定の方法
不動産は所有者が勝手に値段を付けて売り出すことも可能ですが、おそらく取引は成立しない可能性が高いです。
なぜならば、
- 不動産の取引は複雑である(個人間では難しい)
- 不動産の価値を計るには独自の計算が必要
- 市場とかけ離れた金額では売れない・買わない
- 取引金額が高額
- 宅建士の資格が必要な場面がある
など、売主と買主が直接取引するにはハードルが高すぎる面があるからです。
そのために不動産業者が仲介役として売主と買主の両方のニーズを満たすマッチングや売却査定を行う役割があります。
では、売却査定の方法について簡単に説明しておきます。
簡易(机上)査定
簡易査定または机上査定と言われる査定方法は、査定対象物件周辺の売り出し事例、過去の取引事例、公示価格などのデータを基に、不動産業者が査定価格として算出するものです。
不動産の基本情報である、
- 所在地
- 土地面積
- 建物面積
- 築年数
などを伝えるだけで、不動産業者に査定を依頼することができます。
つまり現地を訪れることなく机上のデータと情報による査定方法になります。
売却の相場や初回見積もりのようなイメージを持っていただけると良いです。
訪問(詳細)査定
簡易査定や机上査定と大きく異なるのは、現地に出向いて確認や調査を行うことを前提とした査定方法であるということです。
事前に収集しているデータ、つまりは簡易査定で使用されたデータや情報に加えて、
- 建物の経年による変化の状況
- 設備(水廻りや給排水など)の状況
- 接道
- 日照
- 近隣の状況
- 周辺環境
- 境界標
など、調査する項目を物件調査票などにまとめて、事細かく調査や確認を行います。
訪問査定は、敷地内に入ることになるため、所有者の立会いの下に行われることが原則です。
査定額が出るまでは1週間以上はかかりますが、精度の高い査定方法のため現実的な売却価格を知ることができます。
不動産査定(売却)の流れ
不動産を売却するためには、大まかでも流れを掴んでおく必要があります。
一般的な流れとしては、
- 不動産業者に売却相談(査定依頼)をする
- 査定価格を知り売却の検討をする
- 売り出し価格を決定して媒介契約をする
- 不動産業者による売却の営業活動
- 仲介役の不動産業者が購入予定者と交渉
- 売主と買主の合意の下で売買契約
- 引き渡しと支払い
となります。
査定依頼から売却までの期間の目安
不動産業者に売却の相談を持ち掛けてから売却までの目安は、早くても3ヵ月から4か月以上の期間が必要です。
状況により売却まで1年以上に及ぶこともありますが、事前に希望する売却時期を不動産業者に伝えておけば、何らかの提案をしてくれます。
希望する売却までの期間があまりにも短すぎる場合は、不動産会社による「買取」が可能ならば、かなり早いスピードで売却できます。
しかし基本的には無理のない期間での売却がベストです。
一括査定の利用
不動産売却についてネット検索すると、「一括査定」という言葉を目にすることがあるかと思います。
一括査定は、ネット上で必要事項を記入して査定を申し込みすると、複数の不動産業者が数時間から24時間以内に一斉に金額を連絡してくるサービスなのですが、実態は前述した簡易査定(机上査定)です。
不動産業者が見つからない場合は、利用してみる価値はあります。
不動産査定前の準備や注意点
不動産売却の流れを掴めたところで、査定の前に必要な準備や注意点も知っておくと、多少は査定価格に影響がでることがあります。
早く売ってしまいたい事情がある場合は、特に事前準備は重要です。
また見落としがちな注意点についても触れておきます。
査定に必要な書類のリスト
査定に必要な書類はあらかじめファイルにまとめておくと便利です。
「あの書類はどこ?」と慌てて探し出すことがないようにしておきましょう。
すでに保管している書類と都度発行が必要な書類が混在していますので、ひとつずつチェックしてみてください。
なお不動産業者から必要書類の指定があれば、それに従うと良いです。
揃えておきたい書類はコチラ。
- 登記済証(権利証)または登記識別情報
- 土地測量図・境界確認書
- 固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書
- 本人確認書類(免許証など)
- 実印と印鑑証明書
- 住民票
- 建築確認済証・検査済証
- 建築設計図書
- 工事記録
揃っていれば安心できる書類
- 売買契約書の控え
- 重要事項説明書
- 物件パンフレット
- ローンの残高証明
- 地盤調査報告書
- 住宅性能評価書(既存住宅性能評価書)
査定の注意点
訪問査定に入る前に、不動産業者にあらかじめ伝えておくべき情報としては、
- 建物外観や設備上の不具合
- リフォームの有無
があります。
隠したくても年間に数百件と査定しているプロの目は誤魔化せないのが現状です。
多少、査定価格に影響はしますが、全てマイナスに働くとは限りません。
リフォームによって機能性や美観が向上していれば、査定価格に反映させることも可能です。
不具合の内容もさまざまであるため、不安な場合は、どうしたら高く売れるかを提案してもらうためにも、あえて情報として伝えておく方がメリットはあります。
できるだけ室内はきれいにしておきましょう。
特に水廻りはクリーニングの検討をおすすめします。
不動産業者が価格を算出する方法
不動産の査定方法は、簡易査定と訪問査定がありますが、あくまでも依頼する側が選択する方法です。
実際に不動産業者が価格を算出する方法とは異なります。
不動産業者が価格を算出する方法としては、
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
以上の3つです。
それぞれ簡単に説明します。
原価法
一戸建ての建物を査定する際に用いられる計算方法です。
すでにある建物を取り壊して新たに立て直す場合の費用(再調達価格)を計算して、建物が劣化している部分を差し引く(減価修正)ことで算出されます。
取引事例比較法
土地を査定する際に用いられる計算方法です。
売却対象の土地と条件が近い土地の過去の取引事例をいくつか選択して平均の坪単価を算出し、売却対象の土地の広さに掛けて算出します。
収益還元法
賃貸や投資用の不動産を査定する際に用いられる計算方法です。
対象の不動産が将来的に生み出す収益力の予測に応じて価格を算出します。
具体的な計算は「直接還元法」「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」がありますが、ここでは割愛します。
売り出し価格の決定
よく混乱する不動産用語として「査定価格」と「売り出し価格」があります。
この2つは、
- 査定価格
不動産業者による売れる価格の目安 - 売り出し価格
売主の希望も含めた広告などに表示する価格
という明確な違いがあるため、査定価格が販売価格であるという認識は改めましょう。
売り出し価格は不動産業者と相談して決めるケースがほとんどです。
売却希望価格(上限)と売却可能価格(下限)
売主が売りたいと考える価格が売却希望価格で、売れる確率が高くなるのは売却可能価格です。
売主の希望と相場のせめぎ合いの中で、売り出し価格を決めていくいくわけですが、あまりにも希望価格が高すぎると売れにくいのは事実です。
しかし安くしすぎて損する必要もないため、綿密に不動産業者と販売戦略を練ることが重要です。
時間的余裕があるなら売却希望価格優先
売却期限を特に決めていない場合は、売却希望価格を売り出し価格として設定しても良いです。
ただしゴールは売却することであるため、あまりにも市場のニーズにかけ離れた価格では、売れない物件のレッテルが貼られる可能性もゼロではありません。
不動産の物件情報をチェックしている人には、「この物件、まだ売れてないな・・」と気づきます。
長期にわたって広告が出ていると、不信感を持ち始める人もいるため、やはり適正価格を少し上回る程度がおすすめです。
売却期限があるときは売却可能価格優先
現金化は早い方が都合良い場合は、売却可能価格に近い価格を売り出し価格として設定すると良いです。
段階的に値下げをする方法を採用する場合でも、低すぎる価格設定だけは避けたいところ。
不動産業者と販売戦略をしっかりと打ち合わせした上で、値下げ幅などを調整していくようにしましょう。
現金化を急いだとしても、売買契約が成立した時点で全額が入金されることはないことだけは注意しておくべき点です。
まとめ
不動産売却の流れ、査定方法、売り出し価格の決定まで、事前に知っておきたい基礎知識を簡単ではありますがまとめてみました。
不動産は購入も大変ですが売却も大変です。
基礎知識を有していても売却の流れは物件ごとに多少の違いも発生するため、臨機応変に対応できるかどうかがカギです。
そのためには実績のある不動産業者のサポートが不可欠なため、信頼できる不動産業者と出会えるかどうかも重要になります。
不動産業者に伝手が無い場合は、一括査定のサービスを利用することで複数の不動産業者と繋がることは可能ですが、信頼性の担保とはなりません。
査定金額を高くして客寄せに利用している不動産業者もゼロではないからです。
まず近隣の店舗に出向いて相談することからスタートしてみましょう。